心因性の病気――つまり、ストレスや人間関係、トラウマなど、心理的なきっかけで起こる不調――は、発症に至る原因が比較的はっきりしていることが多いのが特徴です。たとえば、家庭や職場でのトラブル、いじめや暴力的な関係、過去のつらい出来事などです。
そのため、「あの人のせいでこうなった」「あんなことがなければ、こんなふうにはならなかった」という気持ちが強くなる傾向があります。被害者意識が生まれるのは、ごく自然なことです。
「自分は悪くない」からこそ難しくなる回復への道
心因性の病気では、実際に本人にまったく非がないケースも多くあります。それでも、回復を目指す上では、自分の考え方や受け止め方、感情の向き合い方を変えていく必要が出てくることがあります。
ここでひとつ、大きな壁が立ちはだかります。
「自分は悪くないのに、なぜ自分が変わらなければならないのか?」
これは、心因性の病気を抱える人がしばしば感じる強い葛藤です。自分を傷つけた相手は変わっていないし、責任も取っていない。それなのに、自分の側が変わらなければならないというのは、とても理不尽に思えるかもしれません。
自己責任ではなく、「自分を守るための変化」
ここで大事なのは、「自分が悪いから変わる」のではない、ということです。
あくまで、「これ以上苦しまないために」「少しでも生きやすくするために」自分の中でできる工夫をしていく、という考え方が重要です。たとえば、同じ出来事をどう捉えるか、どう気持ちを切り替えるか、過去をどう扱っていくかといった心の向き合い方です。
これは簡単なことではありません。頭ではわかっても、気持ちがついてこないことも多いでしょう。変わるためには時間もエネルギーも必要ですし、「変わらなければ」と思うこと自体が負担になることもあります。
まとめ
心因性の疾患においては、発症の原因が明確であり、被害者意識が強まる傾向があります。その一方で、回復のためには自己の内的な変化が求められることが多く、そこには大きな葛藤が生じます。変わらなければならないのは自分である、という事実を受け入れることは、多くの患者にとって困難であり認められないものでしょう。

