精神疾患について「どのくらい重症なのか」を考えるとき、私たちはつい「症状の数や種類」に目を向けがちです。
幻覚があるから重い、落ち込みが深いから重い――。もちろん症状の強さは重要です。しかし実際の精神医学では、症状そのものよりも「社会にどれくらい適応できているか」が重症度の大きな基準になります。
症状が軽くても「重症」になることがある
例えば、ある人が軽いうつ症状を抱えているとします。気分の落ち込みや不安はあるけれど、仕事や家事はなんとかこなせている。こうした場合、医師は「機能は保たれている」と判断し、比較的軽症とされます。
一方で、症状が目立たなくても社会生活が大きく崩れている人もいます。外出できない、仕事に行けない、人間関係が維持できない――。この場合、症状が強くなくても「重度」と評価されるのです。
精神病より重症な神経症と判断される時
通常、神経症に含まれる病気よりも精神病に含まれている病気の方が重症の精神疾患だとされています。しかし、神経症の人であっても精神病よりも重症と判断をされる場合もあります。それは、神経症のせいで家からも出られずまともな日常生活も送れていないような状態です。精神病でも日常生活はなんとかなっている人もいる中、このような状態の神経症の人は重度だと言えます。
重症度を測るには、どんな症状があるではなく、日常生活を送れているか、人と関われるか、引きこもっていないか、などの方が重要な基準なのです。
国際的な評価基準でも重視される「社会的機能」
世界保健機関(WHO)が提唱する ICF(国際生活機能分類) では、病気を「症状」だけでなく「活動や社会参加の制約」とセットでとらえることを重視しています。
また、以前は GAFスケール(全般的機能評定尺度)が使われ、現在は WHODAS 2.0 という評価法が国際的に導入されています。いずれも共通しているのは、生活や社会適応の状態が重症度の指標になるという点です。
臨床現場でも
精神科医は診察で「どんな症状があるか」だけでなく、必ず「生活できているか」を確認します。
• 学校や職場に行けているか
• 人との関わりを持てているか
• 日常生活が維持できているか
こうした機能の部分が保たれていれば、たとえ症状が目立っても「重症」とは限りません。逆に、症状が静かでも生活全体が破綻していれば、重度と考えられるのです。
まとめ
精神疾患の重症度は「症状の派手さ」ではなく、どれだけ社会に適応できているか、生活を維持できているかで決まります。
これは患者本人にとっても大切な視点です。症状をゼロにすることだけを目標にするのではなく、「生活を取り戻す」「社会に参加できる」ことを目標にすると、治療や回復の道のりがより現実的で意味あるものになるでしょう。

